IA SUmmit 06 Redux Report

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こんにちは、ハセガワ@コンセントです。
今日は5/19に開催されたIAサミット報告会の模様をレポートしたいと思います。

報告会の概要

会は19時半会場、20時頃からスタートしました。発表は、ハセガワのプレゼンテーションにみなさんが適宜質問やつっこみをいれていくかたちで進められました。基本的にハセガワが参加したり興味を持ったセッションについての話が中心となりましたが、特に、タグ/フォークソノミー、アクティビティ中心設計、Pace Layeringという考え方、というトピックについては議論が大いに盛り上がりました。

(サミットはIAコアとIA R&Dにわかれてセッションが走っていましたが、ハセガワが主にIA R&Dばかりに参加していたので、レポートもそっち中心となりました。)

当日のハンドアウトは、こちらです。

サミット全体について

まず全体についての話では、500人程度の参加者のうち、半数がはじめての人、そして企業側の参加者の参加割合が多い、という点についてみなさんの反応がありました。この点については最後の方でも議論になりましたが、米国では特に専門分化が進んでおり、制作側に限らず企業側も職種としてIAという形で独立していることがひとつの要因としてあげらるかと思いますが、それにもまして情報アーキテクチャという言葉自体の認知度がこれほど高まっている点は注目に値すると思います。

タグ/フォークソノミー

発表の内容では、まずタグ/フォークソノミーについて議論となりました。今年のIAサミットでは参加者のネームプレートにも「タグ」が書き込まれるなどタグについてのセッションや議論が盛んでしたが、サミットのなかでの発表では、

  • UIとしてのタグクラウド、どうサイトに実装したらよいのか
  • タグ/フォークソノミーとはなんなのか

というまったく異なったアプローチの発表が行われました。ハセガワも後者のほうのセッションにばっかり参加していましたが、報告会場でも後者のタグ/フォークソノミーとはなんなのか、について熱い議論となりました。IAサミットでは、タグ/フォークソノミーは(期待の意味も込めて)ソーシャル情報アーキテクチャ(Social Information Architecture)として従来の情報アーキテクチャと対比されていましたが、まずその点が論点となりました。

タグをつける行為は自分のためなのか、他人のためなのか、という点ですが、ここれは参加者でも人それぞれで、他人のためを想定してタグをつける人もいれば、まったく自分にしかわからないタグをつける人までおり、はたして一般にタグをソーシャル情報アーキテクチャと呼んでよいものか、という議論となりました。

また、タグシステムが崩壊しないためには、キーワードを収斂させるような圧力(例えばdel.icio.usではインクリメンタルな自動補完)によって、語彙を整えることが必要になるのではないか、という議論がなされました。これは、本来的な意味でのFolksonomyではなくなりますが、システムとして機能させるためにはこういったバランス取り必要であるという議論となりました。

鋭い意見として、日本語でタグ付けを行った場合、漢字コードは一般には読みは反映されないため、アルファベットに対して順序の意味がなくなり、頻度順に並べてしまうと単なる人気キーワードランキングになってしまう、という指摘がありました。MS Excelの要に内部的に読みを持てば避けられますがおそらくウェブインターフェイスではちょっと難しいと思われますが、このあたりが日本でいまいちタグが普及していない要因では?といった意見も出されました。

Pace Layering

タグ/フォークソノミーとはなんなのか、というアプローチのなかでさかんに引用されていたのが、Stewart BrandのHow Buildings Learnです。

How Buildings Learns: What Happens After They’re Build

Stewart Brand著

本の要約が建築家の秋山東一さんのサイトにあります

aki’s STOCKTALKING
http://landship.sub.jp/stocktaking/archives/000012.html

この本は建物が建った後のどのように変化していくか、その要素や要因について分析を行った本です。私は知りませんでしたが、Stewart Brandが2003年のIAサミットにてキーノートスピーチを行っており(奥さん情報ありがとうございます)、これでIA連中にこの本が知られたのだと思います。私自身は、アーティストの沖さんに数年前に教えていただいてIAとの共通点を感じていただけに、今年のサミットでみながこの本を引用していたことに驚いていました。

この本の中でPace Layering(ペースの階層)という考え方が紹介されています。これは、建物のなかでなかなか変わらないもの(例:土地)から簡単に変えられるもの(例:机や椅子などのモノ)までを階層化する、というものです。IAサミットでの発表では、おもにこの部分に着目して、

  • 情報アーキテクチャの質を議論するときのポイントとする
  • タグ/フォークソノミーが情報アーキテクチャのなかでどこに位置するかを考えるよりどころにする

という文脈でで引用されていました。この考え方自体は、あるいみあたりまえといってはあたりまえなのですが、これまで情報アーキテクチャにそういった「情報アーキテクチャ自体の時間変化」といった要素が盛り込まれていなかったために、CMSやフォークソノミーの情報アーキテクチャを議論するために、意識されているのだと思います。

報告会では、建築やデータベースなどのシステム構築の観点からの考え方などについても議論されました。

この本は和訳されていないのですが、和訳するまではいかないにせよ、ぜひ読書会は開催したいですね(>谷口さん)。

ACD: Activity Centered Design(アクティビティ中心設計)

User Centered Design(UCD: 人間中心設計)に対して、より新しい革新を促すための考え方としてActivity Centered Design(ACD: アクティビティ中心設計)というものがサミットでは紹介され、この部分についても発表会では議論となりました。ドン・ノーマンも最近ではACD派、とのことで世の中的にも注目度が高いのだと思います。

Activity Centered Designは言ってみればペルソナ→文脈→タスクといった流れではなく、タスクに文脈を紐付けて考えようよ、というアプローチだと思いますが(この点で違っていたらどなたか指摘お願いします)、はたしてこれで革新的なものが生まれるのか、これはUCDとは違うのか、といった議論がなされました。

また、

  • 人間中心設計を否定するモノではない
  • Usage Centered Design(利用法中心設計)という考え方もある、これに近いのでは?

といった意見も出されました。

質疑/議論

参加者の方からの質問では、

Q. IAのケーススタディ的なものはなかったのか?

A. なかったです

Q. Pace Layeringへの言及はどの程度あったのか?
A. 直接引用していたのはハセガワが参加したセッションでは3つです。

Q. で、ぶっちゃけ盛り上がっていたの?
A. かなり盛り上がってました。が、米国人はこういったカンファレンスとかって自分から盛り上がって参加するからなんとも言えないですけどね。。。

といったものがありました。

実際質問を受けて思いましたが、いわゆるサイト構成についてのケーススタディや考え方の発表はあまりIAサミットでは見たことがありません。ファセットや琢そのミーについてはありますが、ナビゲーションとしてどう分けるのか、という点は、そういう意味では米国ではあまりにも自明にとらえすぎていて、そこをユーザー視点で、という観点がないのではないかとすら感じます。そのあたりが、米国のIAと日本のIAの違いといってもいいのかもしれません。このあたりについて米国のIAに詳しい方がいたら議論したいです。

会は例によって時間をオーバーし11時頃まで続き、その後1時過ぎまでビール片手に残った方での議論となりました。

最後に

私自身消化し切れていない点が多々あり、参加者の方にきちんと発表の内容を伝え切れていなかったように思いますが、IAサミットをネタに有意義な議論をすることができたと思います。参加された方にお礼を申し上げたいと思います。

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