World IA Day 2012 東京 開催

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World IA Day 2012 東京
去る2/11(土)、建国記念日でもあるこの日に、日本初のIAコミュニティ主催の大規模なIAイベントである、World IA Day 2012 東京(以下WIAD 東京)が開催されました。
WIADは世界的なIAコミュニティである、IA Institute(iainstitute.org、以下IAI)が主催する、世界14都市で同時開催されるイベントです。
今年は、初めての試みとして、昨年秋頃から開催地選定、プログラム開発などが行われました。
まず、全世界共通テーマとして、テーマチェアの、かつてIAIの代表も務めたことのあるJorge Arango氏が「理解の構造をデザインする(Designing the Structure for Understanding)」を設定しました。
これは、IAのそもそものコンセプトである、「探している情報を見つけやすく、見つけた情報をわかりやすく」に立ち返る、大変的を得たテーマ設定だと思います。
また、最近IAのトレンドであるクロスチャンネルIAや、FAQにもなっているIAとUXの関係などを考える上でも、IAという分野の位置づけや役割を明確にし、他分野の人にもよい問題提起ができるテーマです。
さて、このテーマを元に、基本的にプログラムは各会場で、講演、パネルディスカッション、アンカンファレンス、ポスターセッション、などから、自由に構成する、という方針が決まりました。また、今回のWIADについては、会場を大学とする、といった全体のトーンアンドマナー設定もなされました。
そうして、コロンビア、ベルギー、カナダ、ブラジル、アメリカ(2都市)、マレーシア、イタリア、パナマ、ルーマニア、フランス、スウェーデン、南アフリカ、そして日本(東京)という14都市が選ばれ、具体的なプログラム作りが始まりました。
日本では、日本でのそれこそ2000年頃からのコミュニティである、IAAJ(もともとはIA勉強会)としての東京開催をオファーしました。場所の選定はいくつか候補がありましたが、僕の古巣である東大情報学環の植田先生にお願いし、本郷キャンパスの福武ホール(福武ラーニングセンター)をお借りすることが可能となりました。
実は場所の検討のため、植田先生を訪れた際に、同時に、一つあたらしい試みを考えていました。それは、行動経済学の分野の人にWIAD 東京でスピーチをおこなってもらう、というものでした。行動経済学は、すでに多くの方がご存じとは思いますが、人間の「非合理的な」行動をベースとした分野であり、この分野の第一人者であるダニエル・カーネマン博士は、今回の山田さんのお話しにも登場した、システム1/2の理論でノーベル賞も受賞しています。
僕自身、大学院で認知科学からシステム論、エージェントシステムを研究していた際に出会ったのがこの行動経済学でした。
当時まだ、「行動経済学」という名前はついていませんでしたが、セイラーの「市場と感情の経済学(現在は絶版、「セイラー教授の行動経済学入門」という名称で復刊)」と出会い、この非合理性が社会を社会たらしめている本質である、とようやく気づき、やっと実際の社会というものに興味を持ち始めました(それまではシステム自体には興味はあったのですが、実際の社会自体には興味がなかったのでした)。
市場と感情の経済学
http://www.amazon.co.jp/dp/447821025X
セイラー教授の行動経済学入門
http://www.amazon.co.jp/dp/4478002630
ちなみに、さらに深く、「どうしてそういった感情というものがあるのか」まで問うたものには、「オデッセウスの鎖―適応プログラムとしての感情」という書籍もあります。どうやって、ではなく、どうして、を問うている興味深い議論です。
オデッセウスの鎖―適応プログラムとしての感情
http://www.amazon.co.jp/dp/4781907520
話を戻すと、植田先生にこの文脈でご紹介いただいたのが、今回行動経済学の商会していただいた青山学院大学の山田先生でした。
さっそく山田先生にアポをとり、不安がる山田先生に「リスナーのことは意識しないでいいから」と無茶なお願いをしたのですが、結果的に多くのIAな方々に行動経済学という分野の概念や用語を紹介できたのではないかと思っています。
選択アーキテクチャやデフォルト理論、また、ソシオメディアの上野さんの話に出てきたモーダルとモードレスの考え方などは、IAやUI設計を行う人が前提として知っておいてよい概念です。
このあたりは、山田先生も交えて、より議論を深めていきたいところです。
また、同様にIAコミュニティのみなさんにご紹介したかったのが、千葉工大の安藤くんです。
安藤くんは、HCDやHI関係ではおなじみかと思いますが、どうしてもまだIA関係の人との接点が少ないように感じ、今回ユーザーエクスペリエンスデザイン(UX)とUXデザインの関係、という内容での講演をお願いしました。
結果、UX=人間側の体験、UXデザイン=その体験を作り続けるためのしくみ、という大変クリアな定義を提示していただけて、なんとなくはやり言葉になっているUXという言葉の一つのものさしを作れたのではないかと思っています。
上記2名は、アカデミックな方面からの論客としてお願いをしましたが、それに対して具体的なIA/デザインの方法論として思いついたのは、最近和訳も出版されたストーリーテリングと、上野さんのモーダル/モードレスの議論でした。
書籍「ストーリーテリング」はRosenfeld Mediaから出た原著で読んだのですが、若干腑に落ちない点もあり、せっかくなので翻訳を行ったUX Tokyo主宰の前田くんと議論したいと思い、ショートプレゼンテーション+パネルの形式としました。
同様に、上野さんのモーダル/モードレスの議論は、UIの議論というより、利用者側のフレーミングやメンタルモデルについての議論であると感じていたため、こちらもショートプレゼンテーション+パネルでのセッションをお願いしました。
ここでの、ショートプレゼンテーション+パネルの形式は、ちょうど昨年11月に開催されたNew Context Conferenceで用いられていた形式で、スピーチだけもしくは全員ちょっとずつプレゼンテーションを行った後のパネルディスカッション、の中間の形式として、やってみたいな、と思っていたやり方でした。
今回は、パネルのほうの方向性が若干拡散してしまった感はありますが、問題提起はできたと思っています。が、やはりパネルで話されている内容の広がりを視覚化したり、記録に残したりするしくみを次回には用意したいと思っています。
ちなみに、アンカンファレンス形式でのもっと会場を巻き込んだ議論も検討は行ったのですが、場所がすり鉢型の会場であったこともあり、今回は見送りました。
夏以降に考えているIA Campイベントではぜひ実現したいですね。
そして、最後になってしまいましたが、実は一番最初にオファーをしたのが、今回OpenUMについて基調講演を行ってくれた、ネットイヤーの坂本くんでした。
坂本くんとは、(ちょっと最近滞ってますが)IA Cocktalk Hourイベントをいっしょに開催をしたり、IAサミットにいっしょにいったりとこれまでも活動を共にしてきたのですが、今回World IA Dayという世界イベントを行うことを考えたとき、東京での参加者に向けた基調講演という意味を超えて、日本で行われているIA分野の活動、という意味でもOpenUMのとりくみを紹介したいと考え、ぜひ基調講演としてお願いしたいと思いました。
海外でも、JJGやLuke Wroblewskiなど、デザインの他分野に対して影響を与えているIAコミュニティの人材はいますが、OpenUMは社会全体に対してのインパクトという意味で大きな影響力を持ちうる活動だと思っています。
そういった意味で、今回の基調講演としてお願いしたいと考えました。
さて、今回、上記のプログラムに関しての議論、会場や運営に関しての議論は、すべて有志のボランティアによって、Basecampを用いて行われました。
プログラムについては長谷川がある程度主導をとりましたが、運営やケータリング、撮影、ノベルティなど、メンバーにまるっきりお任せしてしまいました。
さすがにみなさん、各々のプロジェクトで活躍されている方だけあって、細かいことまで拾っていただけて、今回のWIAD 2012 東京はまさにチームパワーあってのものだと実感しています。
今回のWIADは、コミュニティ主導のイベントとして、ひとつのきっかけになったのではないかと思っています。
終了後の懇親会でも多くの方から、今後の会だけでなく運営自体への参加表明を伺うことができました。
一方的なにかを教えるとか習うというものではなく、コミュニティとして価値を高めていく場につなげていきたいですね。
ということで、まずはおそらく今月末か来月頭にIxDA interactions 2012 Reduxを考えていますので、ぜひご参加ください。こ

こんにちは、IAAJ/コンセントの長谷川です。

去る2/11(土)、建国記念日でもあるこの日に、日本初のIAコミュニティ主催の大規模なIAイベントである、World IA Day 2012 東京(以下WIAD 東京)が開催されました。
WIADは世界的なIAコミュニティである、IA Institute(iainstitute.org、以下IAI)が主催する、世界14都市で同時開催されるイベントです。

今年は、初めての試みとして、昨年秋頃から開催地選定、プログラム開発などが行われました。
まず、全世界共通テーマとして、テーマチェアの、かつてIAIの代表も務めたことのあるJorge Arango氏が「理解の構造をデザインする(Designing the Structure for Understanding)」を設定しました。

これは、IAのそもそものコンセプトである、「探している情報を見つけやすく、見つけた情報をわかりやすく」に立ち返る、大変的を射たテーマ設定だと思います。
また、最近IAのトレンドであるクロスチャンネルIAや、FAQにもなっているIAとUXの関係などを考える上でも、IAという分野の位置づけや役割を明確にし、他分野の人にもよい問題提起ができるテーマです。

さて、このテーマを元に、基本的にプログラムは各会場で、講演、パネルディスカッション、アンカンファレンス、ポスターセッション、などから、自由に構成する、という方針が決まりました。また、今回のWIADについては、会場を大学とする、といった全体のトーンアンドマナー設定もなされました。

そうして、コロンビア、ベルギー、カナダ、ブラジル、アメリカ(2都市)、マレーシア、イタリア、パナマ、ルーマニア、フランス、スウェーデン、南アフリカ、そして日本(東京)という14都市が選ばれ、具体的なプログラム作りが始まりました。

日本では、日本でのそれこそ2000年頃からのコミュニティである、IAAJ(もともとはIA勉強会)としての東京開催をオファーしました。場所の選定はいくつか候補がありましたが、僕の古巣である東大情報学環の植田先生にお願いし、本郷キャンパスの福武ホール(福武ラーニングセンター)をお借りすることが可能となりました。

実は場所の検討のため、植田先生を訪れた際に、同時に、一つあたらしい試みを考えていました。それは、行動経済学の分野の人にWIAD 東京でスピーチをおこなってもらう、というものでした。行動経済学は、すでに多くの方がご存じとは思いますが、人間の「非合理的な」行動をベースとした分野であり、この分野の第一人者であるダニエル・カーネマン博士は、今回の山田さんのお話しにも登場した、システム1/2の理論でノーベル賞も受賞しています。

僕自身、大学院で認知科学からシステム論、エージェントシステムを研究していた際に出会ったのがこの行動経済学でした。
当時まだ、「行動経済学」という名前はついていませんでしたが、セイラーの「市場と感情の経済学(現在は絶版、「セイラー教授の行動経済学入門」という名称で復刊)」と出会い、この非合理性が社会を社会たらしめている本質である、とようやく気づき、やっと実際の社会というものに興味を持ち始めました(それまではシステム自体には興味はあったのですが、実際の社会自体には興味がなかったのでした)。

市場と感情の経済学
http://www.amazon.co.jp/dp/447821025X

セイラー教授の行動経済学入門
http://www.amazon.co.jp/dp/4478002630

ちなみに、さらに深く、「どうしてそういった感情というものがあるのか」まで問うたものには、「オデッセウスの鎖―適応プログラムとしての感情」という書籍もあります。どうやって、ではなく、どうして、を問うている興味深い議論です。

オデッセウスの鎖―適応プログラムとしての感情
http://www.amazon.co.jp/dp/4781907520

話を戻すと、植田先生にこの文脈でご紹介いただいたのが、今回行動経済学を解説していただいた青山学院大学の山田先生でした。

さっそく山田先生にアポをとり、不安がる山田先生に「リスナーのことは意識しないでいいから」と無茶なお願いをしたのですが、結果的に多くのIAな方々に行動経済学という分野の概念や用語を紹介できたのではないかと思っています。

選択アーキテクチャやデフォルト理論、また、ソシオメディアの上野さんの話に出てきたモーダルとモードレスの考え方などは、IAやUI設計を行う人が前提として知っておいてよい概念です。
このあたりは、山田先生も交えて、より議論を深めていきたいところです。

また、同様にIAコミュニティのみなさんにご紹介したかったのが、千葉工大の安藤くんです。
安藤くんは、HCDやHI関係ではおなじみかと思いますが、どうしてもまだIA関係の人との接点が少ないように感じ、今回「ユーザーエクスペリエンス(UX)とUXデザインの関係」、という内容での講演をお願いしました。

結果、UX=人間側の体験、UXデザイン=その体験を作り続けるためのしくみ、という大変クリアな定義を提示していただけて、なんとなくはやり言葉になっているUXという言葉の一つのものさしを作れたのではないかと思っています。

上記2名は、アカデミックな方面からの論客としてお願いをしましたが、それに対して具体的なIA/デザインの方法論として思いついたのは、最近和訳も出版されたストーリーテリングと、上野さんのモーダル/モードレスの議論でした。

書籍「ストーリーテリング」はRosenfeld Mediaから出た原著で読んだのですが、若干腑に落ちない点もあり、せっかくなので翻訳を行ったUX Tokyo主宰の前田くんと議論したいと思い、ショートプレゼンテーション+パネルの形式としました。

同様に、上野さんのモーダル/モードレスの議論は、UIの議論というより、利用者側のフレーミングやメンタルモデルについての議論であると感じていたため、こちらもショートプレゼンテーション+パネルでのセッションをお願いしました。

ここでの、ショートプレゼンテーション+パネルの形式は、ちょうど昨年11月に開催されたThe New Context Conferenceで用いられていた形式で、スピーチだけもしくは全員ちょっとずつプレゼンテーションを行った後のパネルディスカッション、の中間の形式として、やってみたいな、と思っていたやり方でした。

今回は、パネルのほうの方向性が若干拡散してしまった感はありますが、問題提起はできたと思っています。が、やはりパネルで話されている内容の広がりを視覚化したり、記録に残したりするしくみを次回には用意したいと思っています。

ちなみに、アンカンファレンス形式でのもっと会場を巻き込んだ議論も検討は行ったのですが、場所がすり鉢型の会場であったこともあり、今回は見送りました。

夏以降に考えているIA Campイベントではぜひ実現したいですね。

そして、最後になってしまいましたが、実は一番最初にオファーをしたのが、今回OpenUMについて基調講演を行ってくれた、ネットイヤーの坂本くんでした。

坂本くんとは、(ちょっと最近滞ってますが)IA Cocktail Hourイベントをいっしょに開催をしたり、IAサミットにいっしょにいったりとこれまでも活動を共にしてきたのですが、今回World IA Dayという世界イベントを行うことを考えたとき、東京での参加者に向けた基調講演という意味を超えて、日本で行われているIA分野の活動、という意味でもOpenUMのとりくみを紹介したいと考え、ぜひ基調講演としてお願いしたいと思いました。

海外でも、JJGやLuke Wroblewskiなど、デザインの他分野に対して影響を与えているIAコミュニティの人材はいますが、OpenUMは社会全体に対してのインパクトという意味で大きな影響力を持ちうる活動だと思っています。
そういった意味で、今回の基調講演としてお願いしたいと考えました。

さて、今回、上記のプログラムに関しての議論、会場や運営に関しての議論は、すべて有志のボランティアによって、Basecampを用いて行われました。

プログラムについては長谷川がある程度主導をとりましたが、運営やケータリング、撮影、ノベルティなど、メンバーにまるっきりお任せしてしまいました。
さすがにみなさん、各々のプロジェクトで活躍されている方だけあって、細かいことまで拾っていただけて、今回のWIAD 2012 東京はまさにチームパワーあってのものだと実感しています。

今回のWIADは、コミュニティ主導のイベントとして、ひとつのきっかけになったのではないかと思っています。

終了後の懇親会でも多くの方から、今後の会だけでなく運営自体への参加表明を伺うことができました。
一方的になにかを教えるとか習うというものではなく、コミュニティとして価値を高めていく場につなげていきたいですね。

ということで、まずはおそらく今月末か来月頭にIxDA interactions 2012 Reduxを考えていますので、ぜひご参加ください。

(ちょこっと加筆)

今回、イベントのページ、申し込み、等ほぼすべてに外部サービスを活用しました。
以下備忘録として記載。

イベントページ:Facebook World IA Day Japan
申し込み:ATND World IA Day 2012 東京 World IA Day 2012 東京|懇親会

プロジェクト管理:Basecamp(非公開)

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